3-1-2 内外装用下塗り塗料

 建築物を構成する部位で壁面は大きな面積を占めており、その仕上げも様々です。現場で施工するコンクリート・モルタルなどや、工場で生産されたPC版・ALC版・サイディングボードなど窯業系建築材料があり、塗装下地として条件が異なります。

 この結果、素材別・仕上げ材別に要求性能に応じた塗装仕様が必要になります。

 窯業系塗装下地では、素材の性質に適合したシーラー(下塗り)や必要に応じて仕上げ精度を高めるパテが使用されます。

 

(1)シーラー(下塗り)の種類

 窯業系建築材料に使用される代表的なシーラーは、3種類に分類できます。

(a)合成樹脂エマルション系シーラー

 透明なクリヤタイプと顔料を含んだ着色タイプがあります。

 このタイプのシーラーは、JIS K 5663合成樹脂エマルションペイント及びシーラー(2002年改正)に性能規定されたものもあります。

(b)溶剤形合成樹脂シーラー

 透明なクリヤタイプと顔料を含む着色タイプがあり、主にアクリル樹脂を用いたシーラーが多いです。

(c)反応硬化形合成樹脂シーラー

 2液型のエポキシ樹脂やウレタン樹脂を用いた、透明なクリヤタイプと顔料を含んだ着色タイプがあります。 特に脆弱な下地に用いる浸透形シーラーはこのタイプが多いです。

 

(2)シーラー(下塗り)の目的

 シーラー(下塗り)の目的は下記のとおりです。

(a)吸込み止め効果

 建築材料は様々で、素地の状態も異なります。この状態の異なる素地の表面状態を均一にし、仕上り性を高める働きです。

(b)アルカリ押さえ効果

 建築材料はアルカリ性であるものが多く、このアルカリが塗膜に悪影響を与え、変色や軟化、エフロレッセンス(白華現象)を発生させることがあります。この現象発症には水分が関与しますが、シーラーはこれらから塗膜を護る働きをします。

(c)付着性向上効果

 建築材料の表面状態や性質から、脆弱なものがあります。その反面、緻密で強固なものもあります。 これらへの付着性を高めるために、脆弱層に対しては含浸し固化するタイプのシーラーが、緻密で強固な層に対しては密着力の高いシーラーを使用します。

 

(3)各種シーラー

(a)合成樹脂エマルション系シーラー

 クリヤタイプが主流で、下地の吸込みを均一にし、作業性向上や仕上がり性を高める効果があります。最近は1液反応硬化形もあり、溶剤形に匹敵する性能を有するものもあります。 合成樹脂エマルションシーラーには、JIS K 5663合成樹脂エマルションペイント及びシーラーに性能を規定されたものもあります。アクリル系エマルションタイプが多いですが、エポキシ樹脂やウレタン樹脂を用いたタイプもあります。

(b)溶剤形合成樹脂シーラー

 外装材のシーラー(下塗り)に使用するものが多く、アクリル樹脂タイプが多用されます。 以前は塩化ビニル樹脂タイプも見られましたが、昨今は激減しています。溶剤形も透明なクリヤタイプと顔料を含んだ着色タイプがありますが、目的により使い分けます。このタイプは乾燥が早く、吸込み止め効果、耐アルカリ性、付着性など安定した性能を発揮します。 ただし、環境問題から溶剤形は減少しつつあります。

(c)反応硬化形合成樹脂シーラー

 代表的なシーラーとして、2液形エポキシ樹脂シーラーと2液形ウレタン樹脂シーラーがあります。  一般には、水のように粘度の低いクリヤタイプが主流で、脆弱層を固化して付着力を高める目的で使用されることが多いです。 当然、このタイプは吸込み止め効果も耐水・耐アルカリなどの塗膜性能もよいです。 欠点は、塗装後1週間以上放置すると、中塗りとの付着性が低下するものが多いので、塗り重ね乾燥時間には注意する必要があります。


(4)各種パテ

 コンクリート・モルタルや石膏ボードなどを塗装する場合、その下地のひび割れ、くぼみ、巣穴、不陸やボードのジョイント部などを平滑にするためにパテが使用されます。 パテには目的に応じて薄膜形や厚膜形などの種類があり、それぞれの性質を十分に理解してから使用しないと、思わぬ事故を起こすことがあります。

代表的な壁面用パテの特性を述べます。

(a)合成樹脂エマルションパテ(JIS K 5669)

 合成樹脂エマルションパテは、JIS K 5669に性能が規定されていて、厚付け用と薄付け用があり、それぞれ目的に応じて一般形と耐水形があります。 1回で塗布できる膜厚は、薄付け形で最大0.5mm、厚付け形で最大1.5mmになるように設計されていて作業性がよく、研磨性も良好です。 合成樹脂エマルションパテは内部用で、原則外部への使用は避けます。 一般内部には一般形を用いますが、台所、浴室や結露しやすい面などには耐水形を用います。ただし、耐水形であっても性能レベルが低いので、厳しい条件での使用は避けます。 コンクリート・モルタルなどのアルカリ下地にパテかいするときは、シーラー塗装してからがよいです。

(b)塩化ビニルパテ

 塩化ビニル樹脂を用いた溶剤形のパテで、合成樹脂エマルションパテに比較して乾燥は早いが、作業性は劣り、研磨性も悪いです。耐水性や耐アルカリ性はよいです。 塩化ビニルパテは、塩化ビニル樹脂エナメル塗装の下地調整用に作られたパテですが、平成16年度版公共建築工事標準仕様書からは塩化ビニル樹脂エナメル仕様が削除されているように、需要は激減している。

(c)エポキシ樹脂パテ

 2液型エポキシ樹脂を用いたパテで、研磨性は劣りますが、性能・厚塗り性などに優れています。エポキシ樹脂パテはウレタン樹脂塗料、エポキシ樹脂塗料、アクリルシリコン樹脂塗料やふっ素樹脂塗料など高性能塗料の下地調整用や、過酷な条件下で使用されることが多いです。 特に最近では、耐震仕様用の下地調整材として、橋脚などに用いられています。

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