3.塗装の要点

3-1 穴埋めとパテかい

 穴埋めとは、素地調整の際に局部的な大きい穴や、割れ、打ち傷、すき間などパテかい作業では縫いきれない状態のものを事前に補修する工程である。

 パテかいとは、下塗り塗膜の乾燥後、のびがあってヘラ切れもよく、作業性のよいパテかい用のパテを、小さなすき間、目違い、くぎ頭、節、割れなどにへらでしごいて平らにする作業をいう。

(1)作業上の要点

 (a)木部の不透明塗装の場合

 やや大きな穴やすき間などには、なるべく、うめ木をするのがよい。やむを得ない場合には、穴うめ用のパテを十分に押し込む。建具、造作、家具などの場合も同様である。

 穴うめ用のパテのうち、不飽和ポリエステルパテは、一度穴うめにしても、パテが完全に硬化するので問題ないが、その他のパテは、一度で付けられる膜厚に限界があるので、パテ種に応じ、十分に乾燥させながら数回に分けてパテ付けするとよい。

 (b)鉄部塗装の場合

 穴うめやパテかいは、原則、さび止め塗料を2回塗りして乾燥した後に行う。これは、鉄部を防錆塗装で確実に保護することを第一とするからである。

(2)下地用塗料(下地材)の大別

 (c)屋外壁面塗装の場合

 ひび割れ、穴うめなどの下地補修には、セメントフィラーやセメント混和用エマルション樹脂を混入したセメントペーストやセメントモルタルなどを使用する。

 原則的に、付着や耐水性の劣る合成樹脂エマルションパテは使用しない。

 

3-2 パテしごき

 素地を平滑にする場合、合成樹脂エマルションパテやオイルパテなどの下地材を用いて、鉄や木、ゴムなどでできたヘラを用いて行う作業のことである。被塗物にヘラでパテを塗り付けた直後、ヘラをなるべく直角にたてながら、ヘラ先に力を加えて塗り付けたパテを、下地に充填する。この時に余分なパテはしごき取るのでパテしごきという。

 

3-3 下地付けと研ぎ(研磨)

(1)下地付けの目的

 ヘラで下地材を素地の全面に、平らに塗り拡げる作業を下地付け又はパテ付けという。高級仕上げはもちろん、より平滑に仕上げる工程で、塗面の肉厚感や平滑感を付与する。

(2)塗り回数と塗膜厚

 素地に凹凸のある場合は、塗装前に下地付けで調整する。この時の所要回数は仕上げの程度に応じて決定する。乾燥後に平滑な面を得るために研ぎ(研磨)を行うので、適度の膜厚が必要であるが、1回で塗り付けられる膜厚はパテ種によって異なる。パテ種の限界を超えて厚塗りすると、パテ面にクラックが入るので注意する。

(3)研ぎ(研磨)の目的・種類

 下地付けの終了した面を平らに調整するための作業を研ぎ(研磨)という。下地材は肉やせも考慮してやや厚めに付けるが、研ぎではなるべく薄く研ぎ落とし、平滑な面を得るように作業する。研ぎは一般的にから研ぎと水研ぎが行われる。から研ぎは研磨紙(サンドペーパー)を用いてそのまま塗面を研磨する方法で、通常は下地付け面を粗研ぎする。研磨紙は研磨紙表面に付着している砂の粒径で番手(粗さ)が決まっている。から研ぎには目的に応じて使用される。一方、水研ぎは、より平滑性を得るために行う工程で、研磨紙に水を含ませながら研磨する方法である。この時に使用する研磨紙は「耐水研磨紙」であり、番手は目の細かいものを使用する。

(4)研ぎの要点

 ①平らな研ぎ面を得るためには、当て板を使用するとよい。当て板は、最初は力の入れやすい小さな板を用いるが、研磨面が平滑性を増すにつれて、大きな当て板に替えると作業がしやすい。

 ②被塗物の角は当て板が強くあたるので浮かせ気味にし、隅は残しやすいので特に注意する。細かい部分は、耐水研磨紙を小片にして指先で使用する。

 ③素地を研ぎだした場合は、鉄部にはさび止め塗料を、木部には吸い込み止めを必ず補修塗りすることが重要である。

 ④研磨によって生じた研ぎかすは速やかに除去しておく。水研ぎで出た研ぎかすは乾燥すると落ちにくくなるので、そのつど清水できれいに拭いとっておくとよい。

 

3-4 目止め

(1)目止めの目的

 目止めの目的は次の通りである。

 ①木材の導管を埋めてから平らな塗装面にする。

 ②塗料が導管内に吸収されるのを止める。

 ③木目を鮮明にする。

 このために施される目止めには、仕上げの方法によって、素地調整後に施す場合、吸込み止めを塗装後に施す場合、着色後に施す場合などがある。

(2)目止めの種類

 目止めの種類を大別すると、水性目止め、油性目止め、着色目止めの3種類に分けられる。

 (a)水性目止め

 最も一般に行われる目止めで、水乾きがすればよく、乾燥時間が早く作業性がよい。欠点は、乾燥後の肉やせ(目やせ)が大きく、次工程の吸込み性も大きい。

 (b)油性目止め

 木目によく充填しやすい。また、次に塗装する塗料の吸込みも少なく、特に水性目止めに比較して肉やせ(目やせ)が少ない。欠点は、樹脂の乾燥に時間がかかることで、作業性が水性目止めよりは劣る。木目に深い素地の場合は、木目内に充填された油性目止め塗料が、十分に乾燥するのに2~3日を要する。

 (c)着色目止め

 目止め剤に着色顔料を混入したもので、目止めと着色工程を同時に兼ねる経済的な方法で、水性、油性のいずれにも利用される。塗装では目止め剤と着色を別工程で行うことが多い。

 (d)目止め剤の種類

 目止めに使用する体質顔料には、との粉、クレー、バライト、せっこう、炭酸石灰粉、ご粉などが用いられるが、最も一般に使用されているのがとの粉である。

 (e)追い目止めと中目止め

 目止め剤は導管などに十分に充填したつもりでも、肉やせ(目やせ)その他でなお、不完全な部分がある。そのために、乾燥後に再び目止めする工程を追い目止めといい、中塗り塗料を1回塗装した後に、再度行う目止めを中目止めという。中目止め剤は、前回と同じものでよく、その方法も変わらないが、より粒子の細かいものの方が、よく目につまる。

 

3-5 着色

(1)着色の目的・種類

 素地に色味を与えて色彩的な効果を得るために着色するが、本来の木の表面状態を生かすために透明に近い着色剤(ステイン)を用いる。ただし、高級な木材には着色しないことが多い。着色方法には、

 ①水性着色剤を使用する方法

 ②油性着色剤を使用する方法

 ③アルコール性着色剤を使用する方法

がある。着色剤の選定は仕上げに使用するクリヤ種によって選択する。油性系クリヤで仕上げる場合は油性着色剤を、水性系クリヤで仕上げる場合は水性着色剤を、その他溶剤系クリヤで仕上げる場合はアルコール性着色剤を使用する。これらの着色剤には塗料が用いられているので、透明性、鮮明さに優れている。簡便な方法として、仕上げに使用するクリヤに同系統の原色(種ペイント)を少量加えて着色する方法もあるが、この場合は色顔料が素地を隠ぺいするので、透明性や鮮明さに劣る欠点がある。

 

3-6 さび止め

 鉄部塗装の下塗りには必ずさび止め塗料を塗装する。

(1)さび止め塗料の選び方

 (a)さび止め顔料による選び方

 さび止め塗料は、用いられるさび止め顔料の種類から分類されるし、その塗料の特徴が決まる。さび止め顔料を大別すると、鉛系、亜鉛系、ジンクロ系になる。鉄構造物には鉛系さび止め塗料や亜鉛系さび止めペイントが、軽金属にはジンクロ系さび止めペイントが、亜鉛メッキには鉛酸カルシウムが使用される。最近は、環境問題、健康問題からジンクロ系さび止め塗料や鉛系さび止め塗料に替わって、亜鉛系さび止め塗料が増加する傾向にある。

 (b)使用する樹脂による大別

 さび止め塗料に用いられる樹脂によって、油性系、合成樹脂系に大別される。代表的には、

 〇油性系さび止め塗料

 〇合成樹脂調合系さび止め塗料

 〇エポキシ樹脂系さび止め塗料

 〇変性エポキシ樹脂さび止め塗料

がある。中塗り・上塗りに使用する塗料種に準じたさび止め塗料を選択することになる。

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