研ぎは、パテ又は塗装面を平滑にすることと同時に、次に塗る塗料のくっつきをよくするために必要な作業である。研ぎ作業には、それぞれに水研ぎ、から研ぎ方法が用いられる。

1.研磨方法

(1)水研ぎ

 耐水研磨紙、といしなどにみずをつけながら研ぐ方法である。一般に耐水研磨紙は、普通の研磨紙に比べて同じ粒度でも研磨能力が高い。耐水研磨紙の場合、パテ研ぎはP180~240くらいが適当である。中塗りはP320~400くらい、上塗りはP600くらいが一般的である。上塗り塗膜のゆず肌を修正する場合には、P1000以上の研磨紙を用いた方が、ポリッシングによる作業が容易になる。

 せっけん水をつけて研ぐと、からみが少なく、きれいな研ぎ面ができる。水を付けるには、布片又はスポンジを水に浸しておき、軽く握って、水をたらしながら研ぐとよい。

 研ぎ方には、手研ぎと機械研ぎがある。研ぎ方向は、往復運動あるいは回転運動を行う。いずれも被塗物の形状などを考慮して使い分けをするとよい。

 

(2)から研ぎ

 研磨紙、研磨布、といしなどを用い、水や油などを使わずに研ぐ方法である。パテ研ぎはP180~240、中塗りはP240~320程度が一般的である。

 研磨作業の能率を高めるために、動力工具の一種であるサンダーを用いてから研ぎを行うことが多い。しかし、粉じんが発生するので、作業者は防じんマスクを着用する必要がある。

2.研磨紙(サンドペーパー)の使い方

(1)研磨紙の種類と番号

 耐水研磨紙(水研ぎ用)、研磨紙(から研ぎ用)及び研磨布に大別される。これらは、研磨材(と粒)を固着させる基材と接着剤が異なり、耐水研磨紙には水に溶けない接着剤が用いられている。から研ぎ用の研磨紙を水につけると、接着剤が溶けて紙だけになってしまう。

 と粒には、炭化けい素、溶融アルミナやガーネットなどが使われている。研磨紙は、と粒の大きさで区別され、番号はふるいの網目の数を表しているから、数字が大きくなるほど粒子は細かくなる。研磨紙の裏を見ると、と粒の材質や粒の大きさを示す記号がわかる。

 炭化けい素は、研いでいる途中に細かく砕け、常に鋭角な面ができ切削性を維持する。また、溶融アルミナは硬く、研削力が強いため下地に鋭く食い込み、旧塗膜のはく離作業に適している。


(2)研磨紙の選び方と使い方

 取り扱う研磨紙は、研ぎ作業後、次に塗る材料によって異なる。

 例えば、パテを付けて場合、P80~150で大きな凸部を研ぎ、P180で研ぎ足を除きながら全体的にパテ面を削り取る。次に、P240でパテ面を平滑に仕上げる。なお、パテを水研ぎすると、パテは水を吸い込み、素地金属がさびたり、塗装後にブリスター(膨れ)が生じたりする。したがって、水研ぎ作業は防水塗膜が形成される中塗り塗膜の研ぎ作業から行うほうがよい。

3.研ぎ作業及び器工具

 研磨作業方法にはハンドファイルや当てゴムなどを利用して行う手研ぎと、サンダーを利用して行う機械研ぎがある。

(1)手研ぎ

 手研ぎは、被塗物の形状が複雑な箇所や下地(ポリエステルパテなど)の大きな凹凸部を研磨するときに行われる。効率は悪いが、人の手で作業するため削りすぎることがなく、また、平滑面を形成するためには最も確実な方法である。

 

(2)サンダーによる研磨

 サンダーによる研ぎは、手による研ぎのおよそ2倍以上の能率が上がる。また、使用する研磨紙は、手研ぎよりも1級粗い研磨紙を使用するので、目詰まりも少なく長持ちし、経済的である。また、作業者の疲労が少ないという利点もあるが、種類によって運動の仕方が異なるので、素地の種類、塗膜の種類に応じて、最も適する使い方をしなければならない。

 サンダーには動力源によりエア式と電気式がある。エア式のほうが本体重量も軽く、素地研磨、塗膜研磨とも使いやすい。また、水研ぎができるのが最大の特徴である。電動式は音は小さいが本体がエア式に比べて重く、感電の恐れがあるので、安全上水研ぎには適さない。

 これらのサンダーはポリッシャーとしても使われる。

a 電気によって動くもの

 動力源に小型のモーター(100~110V)を用いて、その回転によって研磨ディスク、又は研磨紙の取り付けられたパットを動かすようにしたもので、電源さえあれば、どこにでも持ち運ぶことができ、簡単に作業ができるという点で、最も多く用いられている。

b エアによって作動するもの

 いずれも圧縮空気の圧力0.4~0.7MPa(4~7kgf/)を利用して、回転、振動を起こさせるようにしたもので、動力源に電気を用いないため、水研ぎと併用できるようになっているサンダーもある。塗膜研ぎと兼用する場合には大変便利である。コンプレッサーを必要とするので、少々音が大きいのが欠点である。その他、所定の研磨紙の裏に接着剤を付け、ゴムパットの表面に張り付けて研磨できるものもある。


(3)ポータブルサンダー

 現場作業に用いる手持ちサンダーをポータブルサンダーと呼ぶ。

a ディスクサンダー

 パッド(研磨面)の動きが単純な円運動を描くため、旧塗膜のはく離、さび落とし、下地パテの粗研ぎなどの作業に使用する。ディスクサンダーは研ぎ足が目立ちやすいため、よい研ぎ足をつける。

b オービタルサンダー

 パッドの中心軸は、だ円の軌跡を描く。このパッドは長方形が多く、また研磨面に当たる面が平面で、かつ面積が広いため、このサンダーは塗膜研磨やパテの面出し作業に適している。

c ダブルアクションサンダー

 パッド自体が回転する上に、その回転軸がサンダー本体の中心軸から変身して回転しているため、複雑な軌跡を描く、また、パッドを研磨面に押し付ける力によってパッドの軌跡が変化するため、研ぎ足はより複雑になり、ペーパー目が目立ちにくくなる。それゆえ、このサンダーは中塗り塗膜の研磨やパテの面出しに適している。

4.磨き

 磨きの目的は、研磨材料に含まれている溶剤によって汚れを取り除き、溶剤が蒸発したあと、残留した油脂分(ワックスなど)をこすることによって光沢を出すことである。

 コンパウンドによる研磨は、それらの中に含まれる研磨材微粒子が面を削って塗面の粗さをさらに細かくし、溶剤は汚れを取り除いて蒸発するので、油脂分が残留して光沢が出る。との粉、角粉などの液体を伴わない粉末による磨きは、その微粒子が面をひっかいて粗さをさらに細かくすると同時に、付着している油脂、ごみなどが取り除かれて光沢が出る。

 いずれの場合でも、作業するときは圧力を強くかけず、作業スピードは緩やかでなければ目的の光沢が出ない。圧力をかけすぎると塗面に傷を作ることになるので、注意しなければならない。

(1)研磨材料の種類と用途

 ポリッシングコンパウドは混合研磨剤という意味で、ワックス、溶剤及び研磨材からできている。研磨材の粒度によって、粗目、中目、細目、極細めに分けられる。これは、塗膜の磨きや、小さな傷を研磨して除いたり、汚れを除去するときなどに用いられる。小物、少量の場合には、ウエスにつけて研磨してもよいが、大物、大量作業の場合には、少量の水で薄めてポリッシャーで研磨する。その後、汚れのないウエスでふき上げる。

 ワックスとは、ろうの意味である。南米ブラジル産のカルナウバロウが世界的に有名で、性能もよい。一般的に液状又はペースト状ワックスは、ワックス成分、溶剤、その他、用途に応じて薬品、安定剤、香料などから成り立っている。

 ワックスは、塗布して伸びがよく、つやがよく出てべとつかず、耐久性のあるものが良質である。素地や塗装面の保護、つや出し、清掃、はっ水、ちりやほこりの付着防止などのために用いられる。

 

(2)ポリッシャーと手による研磨法

 ポリッシャーでコンパウンド磨きをする場合は、水などを加え、手磨き時よりも薄めたコンパウンドを使用する。

 薄めたコンパウンドをはけで塗布して、フェルトパッドを付けたポリッシャーで磨き、最後にきれいなウエスで磨く。ワックスの場合は、軟らかな木綿白布でワックスを伸ばし、ポリッシャーでつやを出す。

 このとき、ポリッシャーの回転は500min-1程度とし、ポリッシャーの回転が速いと、また、加える圧力が強いと研磨面に熱を生じ、きずをつける原因となるので注意しなければならない。磨き上げるときは、作業範囲を50程度の面積に区切ったほうがやりやすい。

 

(3)たんぽずり

 塗装の仕上げで、塗料を薄く塗布して平滑な仕上げ面を得るために行う。特に、はけ塗りでは、はけ目をたんぽずりによって平滑にする。主に塗膜に相溶性のある揮発性塗料(セラックニスやクリやラッカーなど)に用いられる工法である。しかし最近は、ポリッシングコンパウンドを利用することが多くなり、熟練を要するたんぽずりはほとんど行われなくなった。

a たんぽずりの目的

 たんぽずりは、はけ塗り後に平滑な塗面を得るために、溶剤で希釈した塗料をたんぽに含ませ、希釈塗料によって塗膜の凸部を溶解して凹部や木目の中に充てんする作業である。仕上がりの良否は、塗料の希釈割合、たんぽずりの技能の差で決まる。

b たんぽの作り方

 たんぽは、木綿の布(かなきん)に、綿を包んでつくる。

 布は、新しいものよりも、のり分のない洗濯したもののほうが仕上がりがよい。綿は青海綿が用いられる。たんぽの弾力性は、塗料を含んだ時に耳たぶくらいの軟らかさがよく、硬すぎても軟らかすぎても美しい仕上げにならない。

c たんぽずりの方法

 たんぽずりは、一般に3~5回続けて行う。運行は、らせんを描くように行う丸ずりと、直線状に行う棒ずりとがある。最初に丸ずりで凹部にすり込むようにし、棒ずりは仕上げに行うのが普通である。たんぽに含む塗料も、初めは濃く、仕上げに近づくにしたがってほぼ溶剤だけの状態で、木目に平行に行い、きれいな塗面とする。

 たんぽの持ち方は、親指、人差し指、中指で軽く押さえ、布の端を薬指と小指に間に出す。たんぽずりは、たんぽに均一に塗料を含ませて行う。初めは軽く、塗料の含みが減少するに従い、強く押すようにする。

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