1.被塗物及び塗料の種類に応じた塗装仕様(工程)

1-1 木部の透明塗装

 (1)透明塗装の目的

  ①素地の持ち味を生かして仕上げる。

  ②素地に色調(着色)を与えて、仕上り感を変える。

  ③素地を塗膜で保護して、汚れや傷から護る。

 (2)JASS18に示された透明塗装用の塗料

 日本建築学会 建築工事標準仕様書・18塗装工事(以下JASS 18)では、透明塗装として次の8種類の標準塗装工程が示されています。この中で、木部に使用するのは①~⑤です。

  ①ステイン塗り

  ②フタル酸樹脂ワニス塗り

  ③ポリウレタン樹脂ワニス塗り

 1)1液形油変性ポリウレタン樹脂ワニス塗り

 2)2液形ポリウレタン樹脂ワニス塗り

  ④クリヤラッカー塗り及び2液形ポリウレタンクリヤラッカー塗り

  ⑤アクリルラッカーつやなしクリヤ塗り

  ⑥アクリル樹脂ワニス塗り

  ⑦アクリルシリコン樹脂ワニス塗り

  ⑧常温乾燥形ふっ素樹脂ワニス塗り

 

1-2 木部の不透明(エナメル)塗り

 〇JASS 18に示されている木部不透明塗装の種別

 JASS 18には木部の不透明仕上げとして次の7種類の工程がある。

  ①合成樹脂調合ペイント塗り

  ②フタル酸樹脂エナメル塗り

  ③ラッカーエナメル塗り

  ④合成樹脂エマルションペイント塗り

  ⑤多彩模様塗料塗り

  ⑥内装薄塗材 E-1 塗り

  ⑦内装薄塗材 E-3 ローラー塗り

 

1-3 金属系素地面の塗装

 (1)金属塗装の目的

 金属系素地には、鉄、アルミ、亜鉛めっき鋼材、ステンレスなどがある。

 金属面塗装の目的は防食だが、塗料の持つ優位性である色彩による美粧も重要である。

 金属製素地は種類によって性質が異なるので、それぞれに適した工程で塗装しなければならない。

 (2)JASS 18に示されている金属系素地面塗装は、下記に示す12種類がある。

  ①合成樹脂調合ペイント塗り

  ②アルミニウムペイント塗り

  ③フタル酸樹脂エナメル塗り

  ④アクリル樹脂エナメル塗り

  ⑤2液形エポキシ樹脂エナメル塗り

  ⑥2液形厚膜エポキシ樹脂エナメル塗り

  ⑦2液形タールエポキシ樹脂塗料塗り

  ⑧2液形ポリウレタンエナメル塗り

  ⑨アクリルシリコン樹脂エナメル塗り

  ⑩常温乾燥形ふっ素樹脂エナメル塗り

  ⑪多彩模様塗料塗り

  ⑫つや有り合成樹脂エマルションペイント塗り

 

1-4セメント系素地及びせっこうボード素地面の塗装

 壁(内壁・外壁)天井、床などにはセメント系素地が多く使用されている。

 種類には下記のものなどがある。

  ①コンクリート

  ②セメントモルタル

  ③プレキャストコンクリート(PC版)

  ④軽量気泡コンクリート(ALC板)

  ⑤スレート板

  ⑥けい酸カルシウム板

  ⑦ガラス繊維補強セメント板(GRC板)

  ⑧押出成形セメント板

  ⑨せっこうボード

 これら素地への塗装の目的は、外壁面では色相、光沢、模様などの意匠を付与し美粧性を高めると同時に、紫外線や中性化などの劣化要因からの保護である。

 内壁では美粧性を重視しながら、必要に応じて防かびや抗菌など機能を付与している。

〇ボード類の塗装

 建材として使用されるボード類のうち、建材の対象になるのはせっこうボード、ハードボード(繊維板)、木毛セメント板、フレキシブルボード(石綿板)、珪酸カルシウム板、発砲気泡コンクリートや各種サイディングボードなどがある。

 これらボードはそれぞれ性質が異なるので、適切な塗材(塗装仕様)の選択が重要である。

 分類すると、

  ①吸込みの大きい下地

  ②表面が脆弱な下地

  ③表面が粗面な下地

  ④表面が緻密な下地

  ⑤アルカリ性の強い下地

などがある。

 これらに対応するには、シーラーや下地調整材の選択がポイントになる。

 吸込みの大きい下地には、一般的には合成樹脂エマルションシーラーが使用されるし、表面が脆弱な下地には、下地に含浸して固化するシーラーが、アルカリ性の強い下地には、耐アルカリ性に優れたシーラーなどが使用される。

 サイディングボードに代表される外部用途では、付着性と耐候性が重視され、最近では水性つや有りシリコン系塗料の採用が増加している。

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